ゾディアック事件(Zodiac Killer Case)は、1968年から1969年を中心にアメリカ・カリフォルニア州北部で発生した連続殺人事件で、犯人は若いカップルやタクシー運転手を襲撃しただけでなく、新聞社や警察へ何十通もの手紙や暗号文を送り、自らを「ゾディアック(Zodiac)」と名乗りました。現在でも犯人の正体は判明しておらず「史上最大級の未解決事件」とも言われています。公式には5名を殺害・2人を負傷させたとされていますが、ゾディアック本人は「37人殺した」と主張していました。
またゾディアック事件が他の連続殺人事件と違う点は、犯人自ら新聞社へ手紙・暗号文を送ったことや犯行後自ら警察に通報したなどがあげられ、非常に劇場型な犯人だったされています。さらにこの時代のアメリカは、ベトナム戦争・公民権運動など非常に不安定な時代でした。このような時代背景の中、犯人が世間に見られるように犯行を行っていたこともゾディアック事件が注目された要因の一つだと考えられます。
現在でも正体は不明ですが、生存者や目撃者の証言から、25~40歳くらいの白人男性、身長170~180cmのがっしりした体形で落ち着いた話し方をしていたと考えられています。また犯人は銃とナイフの両方を使用し、暗号や手紙を書けるだけの知識も持っていました。さらにゾディアックの暗号には4つの主要暗号があり、そのうち2つはいまだ未解読となっています。
第1事件/レイク・ハーマン・ロード事件
レイク・ハーマン・ロード事件(Lake Herman Road)は、ゾディアック事件の最初の公式被害とされる事件ですが、初めは犯人がゾディアックと名乗っておらず、単なる未解決の二重殺人事件として捜査が始まりました。この事件の約7か月後、新聞社に届いた手紙で犯人自身がこの事件への関与を認めたことで、ゾディアック事件の第1事件と位置づけられることになりました。
被害者はデイヴィット・アーサー・ファラデー(17)、ベティ・ルー・ジェンセン(16)の2名で2人はこの日初めての正式なデートだったとされています。
事件発生時刻は午後11時40分~20分ごろと推定されていますが、これは複数の目撃証言から導き出されたものであり、犯人はわずか6分間で犯行に及んだと考えられています。
デイヴィットは車のすぐ横で至近距離から左耳付近を1発撃たれており、ほぼ即死だったと考えられています。またベティはデイヴィットが打たれた瞬間必死に逃げましたが、犯人はベティ背中を中心に複数発発砲し、ベティは8~9mほど走ったところで死亡していました。現場には22口径セミオート拳銃の薬莢が10個落ちており、弾道や薬莢の分析から、この事件は1丁の拳銃による犯行であると考えられています。事件後、通りかかったステラ・ボルヘスが異変に気付き警察に通報したことで殺人事件として捜査が始まりました。
この犯行の奇妙な点は、性的暴行の後がなかったことや財布がそのままのなっていたこと、またベティだけが何発も撃たれていたという点です。これは犯人が焦って連射した説や逃げられそうになったため撃ち続けた説などがあります。また犯人の目的は性犯罪や金銭ではなく殺害そのものであった可能性が高いとされています。
第2事件/ブルーロックスプリングス事件
ブルーロックスプリングス事件(Blue Rock Springs shooting)は、1969年7月4日深夜から5日未明にかけてアメリカ・カリフォルニア州バレーホで発生した銃撃事件です。また事件発生から約40分後、地元警察署に匿名の電話がかかってきました。この電話により、1968年12月のレイク・ハーマン・ロード事件との関連が初めて示されました。さらにこの事件は、後に「ゾディアック事件」の2件目の犯行として広く認められています。
被害者はダーリーン・フェリン(22)とマイケル・マゴー(19)の2名で、2人は当時ブルーロックスプリングス公園の駐車場で車を停めて話をしていました。そのとき一台の車が近づいてきましたが、一度その場を離れます。数分後、その車は戻ってきて二人の車の後ろに停車しました。運転手の男は車から降りると、懐中電灯を二人に向けました。マゴーは警察官だと思い込んで警戒を解いたと証言しています。しかし男は突然9mm拳銃を発砲しました。さらに一度立ち去った後、まだ生存していることに気づいて戻り、追加で発砲しています。
マゴーは重傷を負いましたがなんと生還しており、事件後犯人の特徴について証言しています。マゴーは犯人は白人男性、年齢は26~30歳前後でがっしりした体格、丸顔、茶色っぽい短髪だったと証言しています。しかし夜間で一瞬の目撃だったため、証言には限界があると考えられています。
事件発生から約40分後、地元警察署に匿名の電話がかかってきており、犯人は低い単調な声で、「公園へ行けば茶色の車の中に撃たれた二人がいる。9mmで撃った。そして去年、レイク・ハーマン・ロードで若者二人を殺したのも私だ。」という内容を伝え、電話を切りました。これにより、1968年12月のレイク・ハーマン・ロード事件との関連が初めて示されました。
さらに約3週間後の1969年8月1日、サンフランシスコ周辺の新聞社に暗号文付きの手紙が届きました。差出人はこのブルーロックスプリングス事件の詳細を記しており、警察しか知らない情報も含まれていたため、犯人本人である可能性が極めて高いと判断されました。
その後、「This is the Zodiac speaking(こちらはゾディアックだ)」という有名な書き出しの手紙を送り始めたことから、犯人はゾディアック・キラーとして知られるようになります。
最初の暗号
ゾディアックが最初に世間へ送った暗号は、一般に「408文字暗号(Z408)」と呼ばれています。1969年8月1日に 合計408文字(正確には408個の暗号記号)からなる手紙が Vallejo Times-Herald 、San FranciscoChronicle 、The San Francisco Examiner の新聞社に送られます。各新聞社には暗号の約3分の1ずつが送られ、犯人は「一面に掲載しなければ、週末に12人を殺す」と脅迫までしていました。
公開から約1週間後、カリフォルニア州の高校教師だった Donald Gene Harden とその妻 Bettye June Harden が暗号を独力で解読しました。この暗号は、複数の記号をアルファベットに対応させる単一換字式暗号(homophonic substitution cipher)でした。
解読された内容(要約)
“I like killing people because it is so much fun it is more fun than killing wild game in the forrest because man is the most dangeroue anamal of all to kill something gives me the most thrilling experence it is even better than getting your rocks off with a girl the best part of it is thae when I die I will be reborn in paradice and all the I have killed will become my slaves I will not give you my name because you will try to sloi down or atop my collectiog of slaves for my afterlife ebeorietemethhpiti”
「人を殺すのは本当に楽しい。森で野生動物を狩るよりもずっと楽しい。なぜなら、人間は最も危険な動物だからだ。何かを殺すことは、私に最高の興奮を与えてくれる。それは女とセックスするよりも、さらに気分がいい。一番いいのは、私が死ぬと楽園に生まれ変わり、私が殺した者たちは皆、私の奴隷になることだ。私の名前は教えない。なぜなら、お前たちは私が来世のために奴隷を集める活動を遅らせたり、止めたりしようとするからだ。EBEORIETEMETHHPITI
最後の約18文字EBEORIETEMETHHPITIは現在でも意味は確定しておらず、ゾディアックの名前が隠されているのではないかという説もありますが、決定的な解釈はありません。
第3事件/レイク・ベリエッサ事件
レイク・ベリエッサ事件(Lake Berryessa attack)は、1969年9月27日にアメリカ・カリフォルニア州のレイク・ベリエッサで発生した襲撃事件で、ゾディアック事件の中でも最も異様な犯行として知られています。この事件はそれまでの銃撃事件とは異なり、犯人が特徴的な覆面を着用し、犯行前に被害者と数分間の会話を行った後、ナイフを使用し犯行に及んでいます。また車のドアに犯行声明を書き残しているなど、ベリエッサ事件はゾディアック事件の中でも異質な特徴を持っています。
被害者のブライアン・カルビン・ハートネル(20)とセシリア・アン・シェパード(22)が湖畔でくつろいでいたところ白人男性が近づいてきました。男は落ち着いた口調で、看守を殺し刑務所から脱獄したこと、メキシコへ逃げるため車と金が必要という趣旨の話をしました。さらに犯人は処刑人のような黒いフードを被り、両目の覗き穴にはクリップ留めのサングラスという非常に特徴的な格好をしていました。また胸部には胸当てのようなものがあり、それには四方の円と十字を組み合わせた記号が白色で描かれていました。後の捜査では、犯人の話した内容を裏付ける事実は確認されておらず、被害者を油断させるための作り話だったと考えられています。
犯人は物干し用のプラスチック製の紐を切ったものを渡し、シェパードにハートネルを縛り上げるように命じた。その後犯人はシェパードを縛り上げると、シェパードがハートネルを緩く拘束したことを見抜き、ハートネルを固く拘束し直した。男性はナイフを引き抜いて2人を繰り返し刺した。ハートネルは背中を6箇所シェパードは全身に10箇所の刺傷を負いました。ハートネルは背中を複数回刺されながらも生還しましたが、シェパードは病院へ搬送された2日後に亡くなりました。ハートネルは当初、強盗で済むと思っていましたが、犯人は金品に興味を示さなかったそうです。また事件後の午後7時40分ごろナパ警察に男から電話があり、電話では現場の場所を伝えた上で、「私がやった。」という趣旨の自白がありました。これはブルーロックスプリングス事件の際と同様、犯人自身が警察へ直接連絡したものと考えられています。生存者であるブライアン・ハートネルは犯人の特徴について、身長約173~183cm程度のがっしりした体格の白人男性、20代後半から30代くらいに聞こえる声、落ち着いてゆっくり話すなどと証言しました。また、「あなた、緊張しているの?」と尋ねると、犯人は笑いながら「そうだね、たぶん」と答えたと証言しています。また犯人は現場を離れる前に、ハートネルの車のドアに黒いペンで次のような内容を書き残しました。
Vallejo
12-20-68
7-4-69
Sept 27-69 – 6:30
by knife
これは1968年12月20日(レイク・ハーマン・ロード事件)、1969年7月4日(ブルーロックスプリングス事件)1969年9月27日(今回)を、自らの犯行として結び付ける「署名」のような意味を持つと受け止められました。
レイク・ベリエッサ事件は、銃ではなく刃物が使われたことや犯人が覆面と胸のシンボルを身に着けていたこと、また犯行前に被害者と数分間会話し生存者が犯人と比較的長時間接触したこと車のドアへ犯行声明を書き残したことなどゾディアック事件の中でも異質な特徴を持っています。これらの特徴から、この事件はゾディアックの中でも最も計画性や演出性が強く表れた犯行の一つであったのではないか考えられています。
ゾディアックの暗号について
ゾディアックの暗号は4種類あり、最初の暗号であるZ408のみ当時解読されていました。長年解読されていなかった暗号の一つであるZ340は2020年にDavid Oranchak、Sam Blake、Jarl Van Eyckeの3名によって解読されましたが、現在になった今もZ13とZ32の暗号は解読されていません。
暗号学の専門家の間では、ゾディアックの暗号は「高度な軍事暗号」というよりも、複数の古典的な暗号技法を組み合わせたものと評価されています。またZ408は比較的典型的なホモフォニック換字暗号ですが、Z340は文字の配置や読み順を工夫することで難易度を大きく高めていました。一方で、Z13やZ32は文字数が極端に少ないため、理論上は解読候補が無数に存在し、正解を客観的に検証することが困難となっています。
容疑者について
1.Arthur Leigh Allen(アーサー・リー・アレン)
アレンは最も有名な容疑者候補で、唯一警察が公式に容疑者として公表した人物です。元小学校教師で、後に児童への性的犯罪で有罪判決を受けています。
事件現場の近くに住んでいたことや、アレンが「『ゾディアック』という名前で連続殺人をしたいと話していた」と友人が証言したことや銃に懐中電灯を取り付ける話を以前からしていたという証言があり、これはブルーロックスプリングス事件の手口と似ていました。 またアレンはゾディアックのシンボルに似た十字マーク入りの「Zodiac」ブランドの腕時計を所有していたことがアレンが最も疑われている理由になります。
一方で、指紋、筆跡鑑定が一致しなかったこと、また後年に比較されたDNAもアレンと犯人を結び付ける決定的な一致は得られませんでした。 現在でもアレンを犯人と断定できる証拠は見つかっていません。このため、現在でも「最有力容疑者」として扱われることはありますが、犯人と断定されてはいません。
- Lawrence Kane(ローレンス・ケイン)
交通事故で脳に損傷を負い、その後は記憶障害や人格変化があったとされています。
生存者の証言と一部外見が似ているという指摘、被害者の一人と接点があった可能性があるとの説、元警察官など一部の捜査関係者が有力視したことがローレンスが疑われた理由になりますが 決定的な物証はなく、DNA・指紋などによる裏付けもありません。
- Richard Gaikowski(リチャード・ガイコウスキー)
リチャードは新聞記者で手紙を書きそうな職業だったこと、声や体格が似ているという証言、一部研究家が暗号との関連を主張したことにより疑われていますが、これらは状況証拠が中心で、公的機関が犯人と結論づける証拠はありません。
- Paul Doerr(ポール・ドーア)
比較的新しい有力候補として名前が挙がる人物です。
ポールは暗号や軍事知識への関心を持っていたことや手紙の文体が似ているという分析、事件当時の居住地や年齢が条件に合うという点で疑われています。しかしこれは主に民間研究者による説であり、法執行機関が犯人と認定したわけではありません。
- Gary Francis Poste(ゲイリー・フランシス・ポステ)
2021年、「Case Breakers」という民間調査グループが「ゾディアックの正体を特定した」と発表し、大きな話題になりました。傷跡が似ている、写真の比較、暗号との関連性などを主張。 しかしFBIや警察はこの発表を認めておらず、専門家からも証拠の解釈に疑問が呈されています。そのため公式には事件は未解決のままです。
容疑者について
1.Arthur Leigh Allen(アーサー・リー・アレン)
アレンは最も有名な容疑者候補で、唯一警察が公式に容疑者として公表した人物です。元小学校教師で、後に児童への性的犯罪で有罪判決を受けています。
事件現場の近くに住んでいたことや、アレンが「『ゾディアック』という名前で連続殺人をしたいと話していた」と友人が証言したことや銃に懐中電灯を取り付ける話を以前からしていたという証言があり、これはブルーロックスプリングス事件の手口と似ていました。 またアレンはゾディアックのシンボルに似た十字マーク入りの「Zodiac」ブランドの腕時計を所有していたことがアレンが最も疑われている理由になります。
一方で、指紋、筆跡鑑定が一致しなかったこと、また後年に比較されたDNAもアレンと犯人を結び付ける決定的な一致は得られませんでした。 現在でもアレンを犯人と断定できる証拠は見つかっていません。このため、現在でも「最有力容疑者」として扱われることはありますが、犯人と断定されてはいません。
- Lawrence Kane(ローレンス・ケイン)
交通事故で脳に損傷を負い、その後は記憶障害や人格変化があったとされています。
生存者の証言と一部外見が似ているという指摘、被害者の一人と接点があった可能性があるとの説、元警察官など一部の捜査関係者が有力視したことがローレンスが疑われた理由になりますが 決定的な物証はなく、DNA・指紋などによる裏付けもありません。
- Richard Gaikowski(リチャード・ガイコウスキー)
リチャードは新聞記者で手紙を書きそうな職業だったこと、声や体格が似ているという証言、一部研究家が暗号との関連を主張したことにより疑われていますが、これらは状況証拠が中心で、公的機関が犯人と結論づける証拠はありません。
- Paul Doerr(ポール・ドーア)
比較的新しい有力候補として名前が挙がる人物です。
ポールは暗号や軍事知識への関心を持っていたことや手紙の文体が似ているという分析、事件当時の居住地や年齢が条件に合うという点で疑われています。しかしこれは主に民間研究者による説であり、法執行機関が犯人と認定したわけではありません。
- Gary Francis Poste(ゲイリー・フランシス・ポステ)
2021年、「Case Breakers」という民間調査グループが「ゾディアックの正体を特定した」と発表し、大きな話題になりました。傷跡が似ている、写真の比較、暗号との関連性などを主張。 しかしFBIや警察はこの発表を認めておらず、専門家からも証拠の解釈に疑問が呈されています。そのため公式には事件は未解決のままです。