時間も空間も存在しない!?未知の天体ブラックホールとは?

今回は、現代の科学でも多くの謎に包まれた天体「ブラックホール」について触れていこうと思います。なお、ブラックホールについて一度にすべて解説するとかなり長くなってしまうため、まずはブラックホールの誕生とその驚くべき特徴から順を追って解説していきます。
- ブラックホールとは何か?
質量が大きすぎる星は、自身の重力が強大なあまり、ある一点を境に「光すら脱出できない」状態となります。その結果、あたかも宇宙にぽっかりと穴が開いたかのような領域が形成されます。このような特徴を持つ天体を「ブラックホール」と呼びます。
「じゃあブラックホールは宇宙に開いた穴なの?」と思う方もいるでしょうが、実際はそうではありません。遠くから見れば、他の天体と変わらない質量を持った天体として存在しています。しかし、一度近づくと光でさえ二度と脱出することができないため、その中心で何が起きているのかを外側から観測することは不可能なのです。
- ブラックホールの誕生
ブラックホールは、巨大な恒星が寿命を迎えた際、自らの重力に耐えきれずに崩壊する「超新星爆発」によって誕生すると考えられています。 恒星は基本、中心部での核融合による「外向きの圧力」と、自身の質量による「内向きの重力」が釣り合うことで星の形を保っています。しかし、核融合の燃料が尽きると、この際どいバランスが崩れることになります。その結果、恒星のコアが重力によって一気に圧縮され、衝撃波とともに大爆発を起こします。これが「超新星爆発」であり、宇宙で最もエネルギーの高い爆発の一つと言われています。
そして超新星爆発の後に残ったコアが、ブラックホールになることがあります。なお、恒星の質量などの条件が揃わなかった場合は、そのほとんどが中性子で構成された「中性子星」が形成されます。また、この中性子星同士が衝突することでもブラックホールが誕生することがあるといわれています。ちなみに、宇宙誕生(ビッグバン)の直後にできたとされるブラックホールを「原初ブラックホール」と呼びますが、こちらはまだ一つも発見されていません。
- 「光すら脱出できない」その圧倒的な重力
ブラックホールは穴のように例えられますが、実際は小さな領域にとてつもない質量が押し込まれた天体であり、実態は穴とは真逆の超高密度な存在です。
宇宙に存在するすべての物体には、その物体の重力を振り切るのに最低限必要な速度である「脱出速度」が存在します。地球の場合は秒速およそ11km、太陽では秒速およそ600kmです。しかし、ブラックホールにおける脱出速度は「光の速度(秒速およそ30万km)」を超えてしまいます。この宇宙において光速を超えるものは存在しないと考えられているため、ブラックホールに近づいたあらゆるものは二度と戻ることはできません。これが、ブラックホールを直接観測することが非常に困難であるといわれる最大の理由です。
現在では、太陽の数倍から100倍程度の質量を持つ「恒星ブラックホール」と、太陽の数十万倍以上の質量を持つ「超大質量ブラックホール」が発見されています。しかし、その中間の質量を持つ「中間質量ブラックホール」の存在はいまだ確固たる発見がされておらず、現代天文学における大きな謎の一つとなっています。

- もしもブラックホールに近づいたら?(スパゲッティ化現象)
ブラックホールは「あらゆるものを無差別に飲み込む」というイメージがあるかもしれませんが、実は十分に離れてさえいれば、他の天体と同じように扱うことができます。例えば、仮に太陽を「全く同じ質量のブラックホール」に置き換えたとしても、地球をはじめとする惑星の軌道には全く影響が出ません(光が届かなくなるため暗く冷たくなってしまいますが、引き込まれることはありません)。
それでは、ブラックホールに近づきすぎてしまった場合はどうなるでしょうか? 物理学者のスティーブン・ホーキング博士は、ブラックホールの「事象の地平面」を通過する際、「頭からつま先までの重力勾配(差)により、スパゲッティのように引き延ばされる」と表現しました。
仮にあなたが足から先にブラックホールへ落ちていったとしましょう。足元にかかる重力と、頭にかかる重力の差が大きすぎるため、身体は縦方向に限界まで引き延ばされ、横方向には強力に圧縮されます。ついには身体が引き裂かれてしまうほどの力がかかり、限りなく細く伸ばされた物体は一直線になってブラックホールへと落ちていきます。この現象を「スパゲッティ化現象」と呼び、どれほど強固な構造を持つ物質であってもこれに耐えることは不可能とされています。
- 時空の崩壊と「特異点」の謎
アインシュタインの一般相対性理論では、事象の地平面の内部に入ると時空の性質が大きく変化すると考えられています。よく「時間と空間が入れ替わる」と表現されますが、実際には「ブラックホール中心へ向かう方向」が、外部における「時間の進行」のように絶対に避けられないものになるということです。
私たちが時間の流れを止めたり過去へ戻ったりできないのと同じように、事象の地平面の内側では、中心へ向かって進むこと自体を避けることができません。そのため一般相対性理論に従うと、どのような運動をしても最終的には「特異点」へ到達してしまいます。
一般相対性理論によれば、ブラックホールの中心には密度・重力が無限大となる「特異点」が存在するとされます。しかし、「無限大」という値は現代の物理学(理論)が破綻していることを意味します。そのため、ブラックホールの中心付近を正しく記述するには、一般相対性理論に代わる新たな重力理論が必要だと考えられています。

- 特異点を克服する新たな仮説
この特異点問題を解決するため、いくつか新しい理論が提唱されています。
- ループ量子重力理論
時間や空間には「最小単位(コマ)」が存在すると考える理論です。時空が連続していない(最小単位がある)と捉えることで、特異点の密度が「無限大」になってしまう計算結果を回避できます。この理論では、特異点の先に時空が続いており、反対側の「ホワイトホール」につながって別の宇宙や時空へ物質が吐き出される、という非常に興味深い可能性も示唆されています。
- ファズボール仮説(超弦理論より)
この宇宙のあらゆる基本粒子は小さな「弦(ひも)」の振動によって成り立っており、ブラックホールとは絡まった弦が高密度に集まった「毛玉(ファズボール)」のようなものであるとする説です。これによって特異点そのものを生み出さずにブラックホールを説明しようとしています。
しかし、これらの理論を実験や観測で証明することは現在ほぼ不可能なため、特異点の完全な解明にはまだ至っていません。
- おわりに:理論から「観測」の時代へ
近年になるまで、ブラックホールは長らく「理論上の架空の天体」に過ぎませんでした。一般相対性理論の計算上では存在が予言されていたものの、実在するかどうかは完全に未知数だったのです。
流れが変わったのは1964年。はくちょう座の方向で強烈なX線を放つ見えない天体(はくちょう座X-1)が観測され、ブラックホールの有力な候補となりました。そして2019年、国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」により、人類は史上初となるブラックホールの撮影に成功しました。
撮影されたのは、地球からおよそ5400万光年離れたM87銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールです。太陽の約65億倍の質量と、180億kmにおよぶシュワルツシルト半径を誇る巨大な天体の周囲で、超高温のガスが周回している光景が映し出され、アインシュタインの理論通りの結果が得られました。
未知の天体が観測されてから約60年。初めは存在すら疑われていたブラックホールですが、今やその存在を疑う天文学者はほとんどいません。人類がその真相に近づいているのは紛れもない事実であり、私たちが生きている間に、残された特異点の秘密すらも明らかになるのかもしれません。
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参考
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スパゲッティ化現象 – Wikipedia
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概要: ブラックホールなどの極めて強い重力場に物体が近づいた際、頭部と足元(または近点と遠点)で生じる潮汐力の巨大な差により、縦長に引き伸ばされ横に圧縮されてスパゲッティ状になる物理現象について記述された解説ページです。
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ブラックホール – Wikipedia
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概要: 超高密度かつ極めて強い重力を持つ天体「ブラックホール」の基礎知識、歴史、一般相対性理論に基づく理論的背景(事象の地平線・特異点)、観測史および最新の研究に関する総合的な解説ページです。
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